新宿undergroundその2

04/02/2008 水曜日

前回の続き。

リストラをされた日、女性マスター(?)のココさん(便宜的にこう呼ぶ事にします)と飲みながら話をしていると、バイトが辞めたらしくて人が足りなくて困っているとの事。
僕はリストラをされた身、金はないけど時間だけはたっぷりあります。
もちろんその場でバイトに立候補し、後日一応面接をしてもらう事に。
で、あっけなく僕の再就職先は決まりました。

当時の僕は6年程設計事務所で働いてきて、現実と理想との狭間で身悶えていたこともあって、少し建築から遠ざかりたいと考えていました。
そういった背景もあって、このチャンスはまさに渡りに船といった感じだったんです。
しかもjazzとお酒だらけの新宿undergroundです。
僕には楽園のような場所でした。

BOX席(電車の座席みたいなんですよね)
cat03.jpg(JAPAN INTERIOR DESIGN 1970年10月号より)


17:00に店に入って、まずはレコードをかけます(ここ重要)
そして店内の掃除。
レモンやライム、alta裏の越後屋(昨年惜しまれつつ閉店しました…)で豆の買い出し。
買い出しから帰ると、レモンやライムを切って、氷を割って、豆の補充をして、コーヒーを落として。
18:00に開店といっても口開けはだいたい19:00過ぎ。
18:00から19:00までの1時間は僕の時間のようなもの。
店のレコードやらCDやら自分で買ってきたレコードやらを聴きながらコーヒーを飲むんです。
まさに至福。
(たまに人生相談の後輩が来たりしてましたが)

19:00から21:00まではほとんどが早番の常連さん。
jazzを聴きながら大体が無音のプロ野球中継を観てます。
21:00過ぎになると一杯飲んできた人たちがゾロゾロとやってきて、22:00過ぎから23:00くらいがピークタイム。

23:00過ぎると再び遅番の常連さんがやってきて、まったりと夜が更けていきます。

僕はというと、ひたすら酒を作ってお客さんに提供して、自分でも飲んでます。
だいたい3、4日で自分のバーボンか焼酎が1本くらいのペースでした。
選曲はココさんの仕事です。
(接客をしながら1曲ずつ変えるというのは、お店のスタイルとはいえ、かなりの手間です)

24:00で僕は上がりとなって、隣の店で一杯引っ掛けてから、現あかりcafeのオーナーの店に行って朝まで飲んでから帰る、という一日。

BOX席
cat04.jpg(JAPAN INTERIOR DESIGN 1970年10月号より)


充実していたといえば充実していたし、楽しい毎日でした。
でも、いろいろと学んできた建築という世界から現実逃避的な生活を送っているという現実は、ふとした時に脳裏をかすめて、僕を深い海の底にいるような錯覚を覚えさせます。
本を読んだり、色々な店に行ってお酒を飲んで、こういう店が造りたいとか、こうした方がいいのに、といった具合に再び建築的(むしろデザイン的)な世界に魅力を感じていくんですね。
そして、自分はこのままで良いのか?なんていう無限ループに陥る訳です。
楽しい毎日(現実)と自分が追い求めているものとの間で見事に揺れ動いていました。

ここでターニングポイントがやってくるんです。
ほぼ毎日顔を会わせて一緒に飲んでいた現あかりcafeのオーナーから、cafeの新規店舗の開業の話です(参照

人生の中で、どこでどう繋がっていくのかなんてわかりません。
人生の中で、どこにチャンスが転がっているのかわかりません。
僕はたまたまお酒と音楽のある場所でチャンスを得ました。
たぶん僕はついているんだと思います。
お酒で無くしたものも多いけど、お酒で得たものも同じくらいか、いや、それ以上に多いんですね。

改めて、アルコールの神様、アリガトウ。
僕はこれからも飲み続けますよ。

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